登熟段階別の気象要因がコムギの穂発芽発生に及ぼす影響

登熟期間中の気象がコムギの穂発芽の発生に及ぼす影響について,ガラス室および圃場で栽培した穂発芽耐性の異なる農林61号とシロガネコムギを対象に解析した.開花期から成熟期の間に採取した穂を吸水させ,15℃,10日間過湿状態に置いた時の穂全体の発芽率を穂発芽率として解析の対象とした.ガラス室において開花期から成熟期までの気温を13℃から25℃の範囲で一定に制御した結果,登熟期間中の平均気温と成熟期の穂発芽率には有意な正の相関が認められた.圃場では年次や作期により登熟期間中の気温および降水日数,積算降水量は変動し,登熟期間中の平均気温と成熟期の穂発芽率の相関はガラス室と比較して低かった.開花から成熟ま...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 82; no. 2; pp. 183 - 191
Main Authors 中園, 江, 大野, 宏之, 吉田, ひろえ, 中川, 博視
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 2013
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.82.183

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Summary:登熟期間中の気象がコムギの穂発芽の発生に及ぼす影響について,ガラス室および圃場で栽培した穂発芽耐性の異なる農林61号とシロガネコムギを対象に解析した.開花期から成熟期の間に採取した穂を吸水させ,15℃,10日間過湿状態に置いた時の穂全体の発芽率を穂発芽率として解析の対象とした.ガラス室において開花期から成熟期までの気温を13℃から25℃の範囲で一定に制御した結果,登熟期間中の平均気温と成熟期の穂発芽率には有意な正の相関が認められた.圃場では年次や作期により登熟期間中の気温および降水日数,積算降水量は変動し,登熟期間中の平均気温と成熟期の穂発芽率の相関はガラス室と比較して低かった.開花から成熟までの登熟段階を,気温から推定した子実含水率により10%毎に区分し,段階別の気象と成熟期の穂発芽率との関係について解析した結果,2品種に共通して子実含水率50%から生理的成熟期までの平均気温と穂発芽率に有意な正の相関が認められた.農林61号では,同じ登熟段階の降水日数と穂発芽率との間にも正の相関が得られた.また積算降水量はいずれの段階においても穂発芽率との相関は認められなかった.これらのことから,子実が急速に乾燥する直前の時期の高温と雨ぬれの継続により,成熟期の穂発芽の発生危険度が高まることが示唆された.
Bibliography:851977
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.82.183