沖縄島に出現するクロダイ属2種の生物学的特徴と漁獲動向

漁業情報と入手可能な環境情報に基づき,沖縄島におけるクロダイ属魚類の分布と種構成を調べた.その結果,少なくともオキナワキチヌとミナミクロダイが沖縄島で同所的に生息し,前種は主に砂泥質や泥質の干潟を有する内湾の浅海域に,後種は内湾をはじめ,海草藻場,サンゴ礁,流入河川がある海域など多様な環境に出現した.胃内容物解析より,前種は季節や年齢階級に関わらず,貝類が50%以上を占めたのに対し,後種は小型巻貝類の季節変動に応じた日和見的な摂餌活動を行い,幅広い餌生物を利用していた.両種の最大の漁場である中城湾では,主産卵期(1–3月)に漁獲が集中し,1–3月の漁獲量は,過去27年間(1989–2015年)...

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Published inSuisan kaiyō kenkyū Vol. 88; no. 1; pp. 1 - 13
Main Authors 太田, 格, 海老沢, 明彦, 立原, 一憲, 上原, 匡人, 塩野, 一歩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 水産海洋学会 25.02.2024
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ISSN0916-1562
2435-2888
DOI10.34423/jsfo.88.1_1

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Summary:漁業情報と入手可能な環境情報に基づき,沖縄島におけるクロダイ属魚類の分布と種構成を調べた.その結果,少なくともオキナワキチヌとミナミクロダイが沖縄島で同所的に生息し,前種は主に砂泥質や泥質の干潟を有する内湾の浅海域に,後種は内湾をはじめ,海草藻場,サンゴ礁,流入河川がある海域など多様な環境に出現した.胃内容物解析より,前種は季節や年齢階級に関わらず,貝類が50%以上を占めたのに対し,後種は小型巻貝類の季節変動に応じた日和見的な摂餌活動を行い,幅広い餌生物を利用していた.両種の最大の漁場である中城湾では,主産卵期(1–3月)に漁獲が集中し,1–3月の漁獲量は,過去27年間(1989–2015年)の各年においても年間漁獲量の35%以上(平均;前種:69.9%,後種:60.8%)を占めた.特に前種は,特定の餌生物や生息環境に高い嗜好性を示したこと,過去27年間の資源量指数が減少傾向を示したことから,後種に比べて脆弱性が高い可能性がある.
Bibliography:ZZ20015015
951461
ISSN:0916-1562
2435-2888
DOI:10.34423/jsfo.88.1_1